山口からカエル、一匹として
~共同代表就任のあいさつ
弁護士 内 山 新 吾
田川章次弁護士と交代で共同代表に就任した内山です。
田川弁護士のピンチヒッターといえば、2017年の県民大集会で、カエルの着ぐるみでメッセージを「代読」したことを覚えておられる方が多いかと思います。そのステージで、私はメッセージを勝手に私流に「意訳」して、次のように話しました。
カエル
県民の力が、上関原発をめぐる情勢をカエル
県民の声が、裁判所をカエル
怒りを力にカエル
悲しみを力にカエル
あきらめを確信にカエル
分断を共同にカエル
原発依存の政治をカエル
エネルギーのあり方をカエル
この山口からカエル
県民集会の成功がカエル
地球と生きものと私たちと子どもたちの未来をカエル
カエルために、ひとりひとりがピョンと跳んでみよう
このメッセージが裁判所に届いたかのかもしれません。
山口地裁は、今年(2018年)7月11日、上関原発用地公有水面埋立免許延長申請に関する住民訴訟で、県知事の判断留保(先送り)を違法と断じ、損害賠償を認める原告住民勝訴の判決を出しました。
この判決は、公金支出のあり方を問う住民訴訟という性質上、直接、建設計画にストップを命じてはいません。でも、これまでの県の姿勢の問題点を指摘し弾劾するもので、上関原発反対の運動に知恵と勇気を与えるものです。
判決の第一の意義は、「県知事は裁量権を逸脱して違法」として、裁判所が行政に対するチェック機能をはたしたことにあります。行政の裁量を広く認める判決が多い中で、勇気ある画期的な判断といえます。県のやり方が、あまりにもひどすぎたため、黙っておれなかったのだと思います。
二つ目の意義は、本判決は、たしかに、延長不許可にすべきだったとか埋立免許は失効したという判断まではしていませんが、実質的には、その判断をしたに等しい内容になっている、ということです。知事は中電に対して、延長期間内竣功の見通しがないのに、公有水面埋立法の趣旨に照らして意味のない補足説明を求めていた、という認定をしています。村岡知事は、一昨年(2016年)8月に免許延長を認めましたが、この判決の立場からすると、延長許可は「正当な事由」を欠くものだったということになります。
司法をめぐる厳しい情勢の中で、こうした判決を勝ち取れたのは、長年にわたる祝島の人たちの粘り強い運動と、3・11の原発事故をきっかけに県内で原発に反対する県民世論が高まり、思想信条のちがいをこえて上関原発建設を許さない共同の運動が広がったからだと思います。正直に言うと、この裁判の提訴時点で、私は弁護団の一員でありながら、判決で勝つことは難しいのではないかと予測していました。あきらめず、果敢にたたかうことの大切さを実感しました。
県知事は、この判決に対して不当にも控訴しました。控訴理由書では、「短絡的」「ありえない」「あまりにも粗い判断」などと、地裁判決を強く非難しています。
広島高裁第1回弁論は、2月4日午後2時から開かれます。弁護団は、地裁判決の意義ある内容を守るために奮闘します。法廷外でも、この判決の内容を武器にして、県の姿勢や責任を問う県民運動を強めることが重要になります。一昨年の知事による延長の許可の誤りを浮き彫りにして、その撤回を迫ること、来年(2019年)の再延長を許さないことです。
いま、アベ政権の暴走が続いています。原発も、環境といのちと地域を破壊するだけでなく、経済的経営的にも成り立たないことがはっきりしているのに、見直そうとしない政治。それは、核兵器と軍事同盟にしがみついて、戦争への道をすすむ姿勢と重なります。沖縄の民意を踏みにじって辺野古の海へ土砂を投入する政治には腹の底から怒りがこみ上げます。でも、暴走は嘆くだけでは止まりません。いつかは止まるだろう、誰かが止めてくれるだろうと期待するだけでは止まりません。あきらめずに行動することが必要です。その輪をどう広げていくか、いつも考えています。
今から4年前、私の大好きなフォーク歌手の笠木透さんが亡くなりました。祝島でもコンサート開いた笠木さんは、亡くなる直前に次のようなラストメッセージをのこしています。
希望は、そんな遠いところにあるもんじゃなんです。
自分のこういう暮らしの中に、ちゃんとあるんです。
こうやって暮らしていけば、人間が人間らしく闘って、人間らしく生きていけるようになるものなんです。
2019年は、いのしし年。いのししに「暴走」の「イメージ」を重ねては、いのししがかわいそうです。私は、原発の暴走を止めて、いのししがのんびり生きられる山を残したいと思います。
ともにがんばりましょう。